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COLUMN

補助金を二つ使いたいとき、
調べる順番が逆になっています

公開日: カテゴリー:補助金・助成金

机に広げた時間軸の図を指さしながら、二人で投資の順番を確かめている様子
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補助金で設備やシステムを入れるとき、どこかで「二つ使えないか」という話が出ます。調べると「同じ経費に二重に補助は受けられない」という答えに行き当たります。ところが制度の側は、それとは別にもう一本の線を引いています。「今年どれを使ったか」で効く線です。

「同じ設備に二つは無理」までは、たいてい調べられている

禁止されているのは同じ補助対象経費に国の補助を重ねることで、事業と経費が分かれていれば複数の制度を使うこと自体は問題になりません。多くの会社は「別の設備なら大丈夫」と確認して、その年の申請に進みます。

この確認は間違っていません。デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領も、申請要件の一つとして「国及び独立行政法人中小企業基盤整備機構その他の独立行政法人の他の補助金等と重複する事業については、補助事業の対象として含んでいないこと」と書いています。問題は、ここで確認が終わることです。経費の重なりは、申請する一件だけを見れば判定できます。来年の投資は、この確認に入ってきません。

制度の側は、経費とは別に「時間」でも線を引いている

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領(第1回)は、補助対象外となる事業者としてまずこう定めます。「本補助金の申請締切日を起点にして16か月以内に以下の補助金の補助金交付候補者として採択された事業者(採択を辞退した事業者を除く)、又は申請締切日時点において以下の補助金の交付決定を受けて補助事業実施中の事業者」。挙がっているのは事業再構築補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金、本補助金です。同じ要領の別の項目には「応募申請日を起点にして過去3年間に『事業再構築補助金』、『新事業進出補助金』又は『ものづくり補助金』の交付決定を合計で2回以上受けた事業者」も対象外と書かれています。

どちらも経費の重なりには触れていません。別の設備、別の事業、別の経費でも、採択された日と交付決定の回数だけで外れます。ある制度を一度使うという決定は、その年の決定ではなく、向こう1年から3年の選択肢を決める決定です。

経費の線と、時間の線 経費の線 同じ補助対象経費に、国の補助を重ねられない(申請する一件だけで判定できる) 時間の線(経費には触れていない) 今回の申請締切日・応募申請日 16か月以内の採択 過去3年間に交付決定が合計2回以上 経費の線と、時間の線 経費の線 同じ補助対象経費に、 国の補助を重ねられない 時間の線 (経費には触れていない) 申請締切日から16か月以内の採択 締切日時点で補助事業を実施中 過去3年間に交付決定が 合計2回以上

図:補助の対象から外れる線は二本あります。一本目は経費の線で、同じ補助対象経費に国の補助は重ねられません。二本目は時間の線で、経費とは関係なく、申請締切日から16か月以内の採択や補助事業の実施中、過去3年間に交付決定を合計2回以上受けていることで外れます。

同じ二つの投資を、順番を入れ替えて走らせてみる

二つの投資を想定します。新しい市場向けの製品をつくる設備と、受発注の事務を減らすソフトウェアです。経費は分かれています。

先に設備を出した場合。採択され、交付決定を受けて事業を実施します。この間、同じ系統の制度には出せません。採択から16か月の線が引かれるため、その系統で来年考えていた計画は、締切が来ても出せない年が一度はさまります。

先にソフトウェアを出した場合。1回の公募で1申請の制限はありますが、不採択だった回や、交付決定後に補助金を受け取る前に取り下げた場合は、次回以降の締切に出し直せると要領にあります。設備は翌年に回しても16か月の線にかかりません。

同じ二つでも、どちらを先に置くかで2年目に残る選択肢が変わります。比べる材料は、先に取ったほうが後ろを塞ぐかどうかです。経費の比較では、この差が出ません。

順番を入れ替えると、2年目に残る選択肢が変わる 1年目 2年目 設備が先 設備(採択・実施) 採択から16か月の線 同じ系統は出せない年 ソフトが先 ソフトウェア 設備(16か月の線にかからない) 順番を入れ替えると、2年目に残る選択肢が変わる 設備が先 1年目 設備(採択・実施) ↓ 採択から16か月の線 2年目 同じ系統は出せない年 ソフトが先 1年目 ソフトウェア 2年目 設備 (16か月の線にかからない)

図:同じ設備とソフトウェアでも、順番で2年目が変わります。設備を先に出すと採択から16か月の線がかかり、同じ系統の計画を出せない年がはさまります。ソフトウェアを先に出せば、設備を翌年に回しても16か月の線にかかりません。

同時に出すなら、重なったときにどちらを選ぶかを先に決める

同じ時期に複数の制度へ出すこと自体は、要領で認められています。ただし同じ要領は続けてこう書きます。「複数の補助金に採択された場合は、交付を受ける補助金を1つだけ選択して、交付申請を行ってください。選択せずに、複数の補助金で交付決定を受け、補助金を受領していたことが発覚した場合は、交付決定日が遅い方の補助事業の交付決定を取り消し、補助金の返還を求めます」。

落とし穴は、選ぶ場面が「両方通った」という良い知らせと一緒に来ることです。社内が喜んでいる最中に、短い期間で片方を手放す判断をします。出す前に、選ぶ基準を一行だけ決めておきます。設備の納期に間に合うのはどちらか、事業実施期間が繁忙期をまたがないのはどちらか。この一行があれば、採択の連絡後の作業は相談ではなく確認になります。

封筒に入った2通の通知を机に並べ、片方に黄色の付箋を貼っている手元の様子

写真:届いた2通の通知を並べ、交付を受けるほうに付箋を貼っています。選ぶ基準を先に決めておけば、採択の連絡後は確認だけで済みます。

設備を二つの事業で兼用する前提の計画は、制度と合わない

経費を分けたつもりでも合わないことがあります。同じ要領は「補助事業により取得した財産は、原則として専ら補助事業に使用される必要があります」と書き、「専ら補助事業に使用」とは事業計画書に記載されている事業にのみ使用することを指すと説明します。

一台の機械を平日は既存の仕事に、空いた時間は新しい事業に、という前提で計画を立てると、ここで合いません。順番を考えるときは共用の前提を外し、どちらの事業のための設備なのかを先に決めます。

補助で取得した設備は、計画書の事業にのみ使う 補助で取得した 一台の設備 計画書に書いた 新しい事業 既存の仕事 (兼用は合わない) 「専ら補助事業に使用」=事業計画書に記載されている事業にのみ使用 補助で取得した設備は、計画書の事業にのみ使う 補助で取得した一台の設備 既存の仕事 (兼用は合わない) 計画書に書いた 新しい事業 「専ら補助事業に使用」= 事業計画書に記載されている 事業にのみ使用

図:補助で取得した一台の設備は、事業計画書に書いた新しい事業にのみ使います。既存の仕事と兼用する前提の計画は、「専ら補助事業に使用」という要領の前提と合いません。

履歴を一枚にしておくと、次の判断がその場の判断でなくなる

何から手をつけるか。使った制度の履歴を一枚にすることからです。制度名、採択の発表日、交付決定日、交付決定を受けた経費、事業実施期間の終わり。この五つが並べば、16か月の線も過去3年の回数も数えられます。

要領は、審査にあたって他の補助金事務局が持つ申請・交付の情報を利用し、本補助金の情報も他の事務局へ共有すると明記しています。履歴は、自社が覚えているかとは別に突き合わされる側にあります。

私たちも似たことをしています。このコラムの下書きは毎日1本作りますが、次にどの切り口を使うかはその場で選ばず、過去に使った日の一覧から最後に使った日が最も古いものを選ぶ、と先に決めてあります。一覧を作るまでは毎回迷い、似たテーマが続きました。ただし一覧だけでは決まらず、注意書きを後から足し続けています。

オフィスのホワイトボードに表を書き出し、三人で内容を確かめている様子

写真:ホワイトボードに、使った制度の履歴を書き出しています。制度名、採択の発表日、交付決定日、交付決定を受けた経費、事業実施期間の終わりの五つが並べば、16か月の線も過去3年の回数も数えられます。

投資の中身がまだ決まっていない段階でできること

ここまでは、投資が二つ以上見えている場合の話です。一つしか見えていない会社が多いと思いますが、その場合でも履歴の一枚は作れます。何も使っていなければ、どの制度から入っても塞がるものがないと確認できます。一度使っていれば、いつまでが塞がった期間かが分かり、公募が出てから慌てて調べ直すことがなくなります。

よくある質問

Q1. 同じ時期に複数の補助金へ応募すること自体は問題ないのですか。

A1. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、複数の補助金に同じ時期に応募申請することは可能としています。ただし複数で採択された場合は、交付を受ける補助金を1つだけ選択して交付申請を行うこととされており、選択せずに複数で交付決定を受けて受領していたことが発覚した場合は、交付決定日が遅い方の交付決定が取り消され、返還を求められるとされています。

Q2. 経費がまったく重なっていなければ、毎年続けて申請できますか。

A2. 経費の重なりとは別の線があります。同じ要領は、申請締切日を起点にして16か月以内に対象の補助金の交付候補者として採択された事業者(採択を辞退した事業者を除く)や、申請締切日時点でそれらの交付決定を受けて補助事業を実施中の事業者を補助対象外としています。さらに、応募申請日を起点にして過去3年間に対象の3補助金の交付決定を合計で2回以上受けた事業者も補助対象外です。

Q3. 補助金で買った設備を、既存の仕事にも使ってよいですか。

A3. 同じ要領は、補助事業により取得した財産は原則として専ら補助事業に使用される必要があるとし、「専ら補助事業に使用」とは事業計画書に記載されている事業にのみ使用することを指すと説明しています。既存事業など補助事業以外で用いた場合は、補助金の交付の目的に反する使用と判断されるとされています。

使った制度と、まだ使っていない制度を一枚に並べる作業からのご相談も受けています。申請書を書く前の整理として、お問い合わせからお知らせください。

使った制度と、まだ使っていない制度を一枚に並べるところから

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出典一覧

独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)」1.2版(令和8年8月)/https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/assets/documents/shinmono_application_guidelines_01.pdf(2026年10月6日取得)

中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」2026年8月28日更新/https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf(2026年10月6日取得)

中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「通常枠」/https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/(2026年10月6日取得)

e-Gov法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和30年法律第179号)/https://laws.e-gov.go.jp/(2026年10月6日参照)

制度は改訂されるため、申請前に最新版の公募要領で該当箇所を確認してください。